|
天井から綿が降ってきたのでわたしは傘をさした 頼りなくふわふわと落ちてくるそれは誰かの羽に似ていた 感触も無く傘のフリルを滑り、音も無く積もる きっとあと少しでこの軽さに息が出来なくなるのだろう 白が嫌いな彼女は、とふと考える 視点が歪んだ目で彼の色は何も受け付けない色だと罵った彼女は 怖がりで夢を拒絶する体を抱きしめて震えているだろうか 純白の空間を足を鳴らしてわたしは歩いた そして彼女はそこにいた 何年も前から居たような自然さで 乱雑に黒髪をかきまぜながらそこにいた 降る白に埋もれていく彼女の口元を見た もういやだ、と動いたように見えた そのときわたしに湧き起こったのは、傘を差し伸べたいという感情だった あらん限りの愛しさで包んであげたかった もしくは、現実しか見ない厳しさを憐れんであげたかった でもわたしはもう動けなかった、白色が肺を圧迫する 彼女が何か叫んで見えなくなる、もう何も見えなくなる 溢れる拒絶の色に溺れながらわたしは目蓋を閉じた そして何も見えなくなった ← |