傷ついた子になりたくて台所から包丁を持ち出した
逆流する人込みは私を見向きもしなかった
急に寂しくなって右手を振りまわす
乾いた視線だけが私を取り囲んだ
ああ、馬鹿な事をした
この鞘も何も納めるものもない無責任な刃物をどうしよう
私は誰かを傷つける勇気も、無関心に耐えられる馴れ合いもできない
私は、誰かに「だめだよ」と言ってほしかった
途方に暮れる包丁の峰を掴んでそれを胸に抱く
冷たい金属だけが私の体温と同化した